カンザス州の静かな住宅街に暮らす平凡な主婦タラ。明るく優しい夫と2人の子供に囲まれ、満ち足りた生活を送っているかのように見える彼女だったが、実はとても深刻な問題を抱えていた。タラの中には複数の別人格が存在し、ストレスや感情の高ぶりなどをきっかけに、突然全くの別人へと変貌してしまうのだ。
現在でも社会的に十分な認知・理解がされているとは言い難い 解離性同一性障害(多重人格)。 その病気をテレビドラマの題材として選んだのは、本作の製作総指揮を務めるハリウッドの巨匠スティーヴン・スピルバーグだ。脚本を担当したのは映画『JUNO/ジュノ』('07)でアカデミー賞を獲得した女流脚本家ディアブロ・コディ。理解のある優しい家族に支えられ、なんとか病気との折り合いをつけながら生きていこうとするタラの日常生活を、シニカルなユーモアと温かい人間模様を織り交ぜながら描いていく。近年のアメリカではシリアスな題材をコミカルに描く“ドラメディ(ドラマ+コメディ)”というジャンルが映画でもテレビでも注目を集めているが、さしずめ本作はその決定版とも言うべきドラマだ。

'09年1月に全米での放送がスタートし、わずか4週目でセカンド・シーズンの製作が決定したという話題作。主人公タラ役の演技派女優ト二・コレットはエミー賞とゴールデン・グローブ賞の両方で見事に主演女優賞を獲得し、一般の視聴者のみならず批評家からも高い評価を得た傑作シリーズである。自らの問題に苦しむ主婦タラとその家族の悩み多き日常を通じて、改めて問われる夫婦のあり方、親子のあり方、そして家族のあり方。そんな彼らの姿をブラックな笑いで包み込む大らかな人間賛歌。深刻なテーマをシュールかつほのぼのとしたユーモアにて描くというのは、脚本家コディならではの卓越したセンスだ。
英語の原題はアメリカ合衆国ならぬ“タラ合衆国(United States of Tara)”。複雑で多面的な要素の集まった人間の強さ、弱さ、哀しさ、面白さを描く、笑いと感動のユニークなファミリー・ドラマである。
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