BBCの時代劇『North & South』で、ロマンチックな主人公ジョン・ソーントンの役を演じ、何千人もの女性たちを虜にした188cm、黒髪で青い目をしたイングランド・レスター生まれのリチャード・アーミテージ。今回、悪名高きギズボーンのガイを演じ、女性ファンたちをさぞがっかりさせたであろう。しかしリチャード本人は、今回の役に非常に満足していた。
リチャード
「悪役を演じるのはとても楽しいよ。周りの人に下品なことを言っても許されるからね。」
その姿は、ソーントン役を演じた際に着ていた時代劇の衣装なしでも十分に魅力的である。
リチャード
「実生活ではあまりさらけ出すことのない、自分の中の粗暴な部分を、ギズボーン役を演じることで表現できるんだ。」
リチャードは悪役であるギズボーンを支持する立場をとりながらこう付け加えた。
リチャード
「ギズボーンは、ある意味英雄でもある。自分の信念を貫く強さ、そしてその信念のために戦う勇気を持っているのだからね」
疎外感を抱く君主、そして野心家であり、成り上がり者でもあるギズボーンは、ロビンが十字軍遠征で留守にしている間、彼の財産や土地を管理していた。そんなギズボーンにとって、財産の持ち主であるロビンが遠征から戻ってくるという知らせは、喜ばしいことではなかった。
リチャード
「ロビンとギズボーンは人間としての根本的な部分は似ているんだ。でも、同じような性格でも、いい部分を発揮するか、邪悪な部分を発揮するかが2人の違いさ。ロビンがヒーローであるのに対し、ギズボーンは反ヒーロー。ギズボーンは、名声や富、そして人気といった華やかさを好むけど、自分の手でそれらをつかみ取ることができるほどの実力の持ち主ではないのだ。」
更に、ギズボーンとロビンは、マリアンとの関係に関してもライバル同士であった。
リチャード
「ギズボーンはマリアンを利用しようと思っていた。マリアンに近づこうと思ったきっかけは、単に体裁のいい花嫁が欲しかったからだ。マリアンは花嫁候補として申し分ない。上品で前代官の娘という肩書きもある。近所では誰もが結婚相手に欲しがる女性さ。だけど次第に、ギズボーンは本当にマリアンに惹かれ始める。だからロビンが無法者のレッテルをはられたことは、ギズボーンにとって好都合だった。結婚相手の候補として、ロビンより有利な立場に立てるからね。ロマンチックな視聴者はきっとマリアンに、森の無法者として暮らすロビンへの愛を選んでほしいと思うだろうね。だけど実際問題、マリアンは父親の立場というものを考えなければならなかったし、ギズボーンもそのことを知っていた。マリアンがギズボーンを愛せるのかどうかということは、それほど重要な問題ではない。ギズボーンと一緒になる現実的な理由があれば、それでよかったんだ。」
村を支配しようとする代官の手下として、悪質な行為を繰り返すギズボーンではあったが、次第にマリアンに対して恋心を抱き始める。
リチャード
「シリーズの終盤に向かうにつれ、マリアンの存在がギズボーンの性格をやわらげていくようになる。ギズボーンは容赦ない虐殺を企てるほど残酷な性格の持ち主であるのにもかかわらず、マリアンへのあふれんばかりの愛情を認め、告白することもできる。そんな2面性を持つ男を演じることができ、とても楽しかった。それほどまでに両極端な2つの感情を、同時に抱くことができる彼の人間性を理解するのは大変だったけどね。きっと歴史上に名を連ねる暴君というのは、家に帰ると妻に近寄り『愛してるよ』なんて言ったりできるんだな。」
リチャードが言う“容赦ない虐殺”というのは、ノッティンガム代官に代わって行われたものだ。ノッティンガム代官役のキース・アレンと共演するにあたり、リチャードは初めのうちは緊張を隠せなかったと明かしてくれた。
リチャード
「キースは気まぐれな性格の持ち主だから、初めは少しずつ仲良くなれればいいと思っていた。でも今では、私生活でもすごく仲良くしてもらっている。キースと一緒に仕事ができてとても楽しいよ。彼との共演シーンを撮ることが、今回の撮影の1番の楽しみと言ってもいいくらいだ。」
今回のドラマ撮影におけるリチャードのもうひとつの楽しみは、体当たりのアクションシーンの撮影だ。
リチャード
「僕たちはみんな、撮影が始まる2週間前から“フッド・アカデミー”というセミナーに参加したんだ。そこで、朝は乗馬の練習、午後はスタジオに行き、剣や弓矢を使った戦術を学んだ。20人から40人もの大人がひとつの部屋に勢ぞろい。みんなまるで10歳児のようにはしゃいでいたよ。特別出演するゲストアーティストたちも各エピソードの撮影練習のためにセミナーやってきて、みんな“一体どんなことをやるんだ?”って目を輝かせているんだ。貴重な経験だよ。」
フッド・アカデミーは、競争意識の高い充実したセミナーへと発展した。撮影期間も終盤にさしかかると、皆でゴーカートに乗りに出かけたりと(アラン・ア・デイル役のジョー・アームストロングが皆を打ち負かした)、撮影以外の場面でも活動を共にするようになった。俳優たちの間に家族のような絆を生み出してくれたのだ。リチャードも同意見だ。
リチャード
「はつらつとした楽しい雰囲気で撮影を進めることができたのも、フッド・アカデミーのおかげだと思っている。」
しかし、そんなフッド・アカデミーを通してでも、馬との関係作りには苦労した様子だ。
リチャード
「1日中同じ場所に立たされた馬が、広いオープンスペースに体を向けると、まず間違いなくその方向に走り出すんだ。それに、監督が撮影中『アクション!』と叫ぶと、僕の合図とは関係なく勝手に走り出してしまう。まるで監督の言葉を理解してるかのようにね。しかも全力疾走だよ。死にものぐるいになって走るんだ。僕は馬の背中にしがみつきっぱなし。みんな僕に向かって『馬をとめろ!』って叫ぶけど、言われなくてもそんなこと分かってた。僕だってできることならそうしたかったんだ。でも、それができないから大変なんだよ。結局、落馬もせず大事には至らなかった。でも、動物と一緒に撮影できて楽しかったよ。動物って、本能のおもむくままに行動するだろ。僕とマリアンが馬のそばでラブシーンを演じていると、馬は僕たちにお構いなしで、突然巨大なフンをしたんだ!笑っちゃうよ。マリアン役のルーシー・グリフィスは、立派な役者だからそのまま演技を続けたけど、僕にはできなかった。涙を流して笑い転げたよ。」
リチャードが初めて馬と出会ったのは、サーカス団に所属していた17歳のころだった。
リチャード
「僕の母親は、僕がサーカスをするために家を出たという記事をいつも楽しそうに読むんだよ。ブダペストのサーカス団にいるときに、イギリスの俳優組合の一員になったんだ。それが人生初のショービジネスの仕事さ。」
以来、リチャードは『Sparkhouse』、『Cold Feet』など、話題のテレビドラマに次々に出演する。そしてBBCのドキュドラマ『The Impressionists 』では、主役のクロード・モネ役として主演を務めた。数々のドラマに出演してきたリチャードにとって、若き日のサーカス団での出来事は、はるか昔のことのように感じるに違いない。しかし、リチャードが時の流れを感じるもうひとつの理由に、ブダペストの町の変わりようもあげられる。
リチャード
「本当に見違えてしまったよ。ブダペストの町もいよいよ目を覚ましたみたいだな。僕が以前にブダペストに滞在していたのは、ベルリンの壁が崩壊された1年後の1990年のことで、共産主義の時代が終わりを迎えたばかりだった。今回、ドラマの撮影で半年間ブダペストに滞在すると聞かされたときは、一瞬とまどったよ。昔の思い出がよみがえってきたんだ。だけど、実際にブダペストに着いてすぐ、なぜ撮影現場にそこを選んだのか分かった。素晴らしい森があり、スタジオやセットも充実している。『ロビン・フッド』の撮影に適した場所は、ブダペスト以外に考えられない。それにブダペストはとても活気があり刺激的な町に発展した。滞在を満喫できたよ。」
もし、シャーウッドの森が『ロビン・フッド』の物語の時代のままの姿で今も残されていたら、今回の撮影は、リチャードの故郷に、より近い場所で行なわれていただろう。リチャードは、長年暮らしていたレスターに様々な思い出がある。
リチャード
「僕の母方のおばがノッティンガム州に住んでいたので、幼いころはよくノッティンガムまで遊びに行ったんだ。センター・パークスとう名の家族用レジャー施設ができる前までのことだけどね。日帰りツアーを気取ってシャーウッドの森まで遊びに行ったな。今とは比べものにならないほど広い森だったよ。それに物語に出てくるあの巨大なオークの木があったことも覚えてる。実際、ちゃんと木の下を通ったんだ。」
しかし、幼いころのリチャードは、『ロビン・フッド』よりも『ロード・オブ・ザ・リング』に夢中だったようだ。それでもリチャードは、小さいころに強い感銘を受けたある1人の人物がいまだに忘れられないと言う。
リチャード
「僕にとってのヒーローは、昔ロビン・フッドを演じたマイケル・プリード以外他にいない。彼の出演した作品を見て“僕も将来こうなりたい!”と思ったんだ。そして黒いマーカーを取り出し、当時10歳の僕にはない胸毛を自分の胸に描き始めた。マイケル演じるロビンのマネがしたくてね!」
今回、リチャードはロビン役ではなく悪役としてドラマに出演することになった。しかし、落胆の様子はない。むしろ、『North & South』以来、彼につきまとってきたイイ男のイメージを払しょくするいい機会だと考えているようだ。
リチャード
「視聴者の方には、是非ギズボーンとマリアンのシーンをテレビで見てもらって、鳥肌を立て、決まりの悪い思いをしてほしい。抗議のメールをたくさん受け取るかもしれないけどね。」
リチャードは少年のような笑顔を浮かべ、そう言った。
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